京都西川製のダブルフェイス羽毛布団をリフォーム
三重県伊勢市のお客様(N様)から、婚礼布団のリフォームのご相談を頂きました。ありがとうございます。
(遠方のお客様はこちらのページをご覧下さい)
「リフォームをするかどうかはまだ決めていないんですけど、布団を見てもらうだけでも大丈夫ですか?」
もちろんです!
常々お伝えしていることですが、元々のお布団の品質(生地と羽毛)が違えば適切なリフォーム内容も変わってまいりますので、当然金額も変わります。一概に4万円です!とか5万円です!と無責任にお答えすることはできません。
またそもそもの大前提として、リフォームをする価値があるかどうかは羽毛の状態を確認してみるまで分かりません。
ですからリフォームをされるかどうかは、お布団の状態を拝見して、見積もりをさせて頂いてからじっくりお考え頂ければそれで結構です( ´∀`)
お気軽にご相談くださいね。
目次
拝見させて頂いた羽毛布団
[スペック]
メーカー:京都西川 (現:西川株式会社)
使用年数:20年前後
サイズ:シングルロング(150×210cm)
側生地:オモテ→シルク50%綿50% ウラ→綿100%
羽毛:ホワイトグース93% 1200g
キルト:ダブルフェイス
シルクの生地は破れやすい
こちらの布団のオモテ面の生地にはシルク50%綿50%という、絹交(きぬこう)と言われる生地が使われています。(高級品です)
綿100%の生地よりも光沢が出て風合いも良いので、当時はこの絹交の生地を使った羽毛布団が婚礼布団として人気を博していたんですね。
ですがこのタイプの生地は現在世の中から姿を消しています。(丸八真綿さんは今も構造を少し変えて絹交の布団を販売しています)
なぜか?
それは絹交の生地は綿100%やポリエステルの生地と比べると非常に強度が弱いからです。
快眠屋では羽毛の状態を長く良好に保つために、10年に1度のリフォームを以前から推奨していますが、羽毛布団のリフォームが一般に認知され始めたのはまだここ最近のことですから、リフォームをせずにそのまま20~30年使い続けていらっしゃる方が圧倒的多数派です。
そうなると、絹交の場合大体10〜15年の使用で生地が裂けて羽毛が出てきますから、「ある日洗濯しようと掛布団カバーを外したら羽毛が出てきていてビックリ!」という事態になるのは無理もありません。
N様も最初は破れた箇所に補修テープを貼って対策をされていたようですが、やはり限界を感じてご相談にいらっしゃったのです。
現在絹交の生地を採用しているメーカーがなくなったというのは、このようなトラブルが相次いだからでございますね。
ちなみに丸八真綿さんの場合は、絹交の生地の裏にもう1枚ポリエステルの生地を使うことで、その問題を解消していますが、そこまでして絹交の生地を使う理由があるかは甚だ疑問です。
生地を二重にすることで生地全体が重くなりますから、①羽毛の膨らみを邪魔してしまう、②布団全体の総重量が増えてしまう、というデメリットがあるからです。
しかもその一方で得られるメリットは高級感だけ…。
布団本体を華やかな色柄で着飾っても結局はカバーを掛けて使うわけですから、それであればカバーの色柄にこだわった方が着せ替えもできますから余程合理的です。
ダブルフェイスは暖かすぎる
またこちらの羽毛布団は京都西川お得意の「ダブルフェイス」という仕立て方で作られていました。
ダブルフェイスとは?
簡単に言うと、2枚の布団を縫い合わせて1枚の布団として仕上げるという方法です。
YouTubeに公式の紹介動画が上がっていましたので、こちらの動画の0:45〜を見てもらうと構造が分かりやすいです。
このダブルフェイスは、ツインキルトやデュアルキルトなどと言われる二層式キルトをさらに発展させたもので、通常の立体キルトに比べて保温力が高まるというメリットがあります。
ですがメリットとデメリットは表裏一体。
寝室の温度が一桁で、代謝が低い高齢の方が使うには快適かもしれませんが、使う人の体質やお住まいによってはダブルフェイスだと暖かすぎて汗をかいてしまう、そんなことにもなりかねません。
実際に、この羽毛布団を使われていたのは奥様でしたが、「暖かすぎてかえって使いにくかった。もしリフォームをするなら次はもっと保温力を控え目にしたい。」とおっしゃられていました。
快適な眠りに必要なのは「圧倒的な暖かさ」ではなく「ちょうど良い暖かさ」です。
こちらの2枚の写真は布団の裏面を撮影したものです。
ひとマスあたりの面積が非常に大きいので、マスの中で羽毛が偏っています。薄いところと分厚いところがある状態ですね。
羽毛の状態は?
こちらがお布団から取り出した羽毛です。
アップにしてみるとこんな感じ。
汚れはあるものの、とても良質なホワイトグースダウンです。ファイバーも玉ダウンも少ないですね。
同じホワイトグース93%という表示でも「Oh…これはイマイチですネ…」となってしまう羽毛も多いので、良質なグースダウンを見かけた時の喜びもまたひとしおです。
質のいい羽毛は本当にかわいいですからね。
そんなこんなでN様には「今回はリフォームを見送られたとしても、捨てずに仕舞っておいて、余裕ができたらリフォームをするのが良いのではないでしょうか?」という話と見積もりをさせて頂いたところ、「ではリフォームをお願いします!」ということでリフォームを承ることになりました。ありがとうございます。
プレミアムダウンウォッシュ&除塵後
[取り出し量]
約1140g
[洗浄・除塵後]
約910g (−230g)
リフォーム後
サイズ:シングルロング(150×210cm)
側生地:綿100% (ソフトサテン)
補充羽毛量:0g
仕上げ量:910g
キルト:変形5×6マス立体キルト
総額:36,000円+税
今回は「保温力を控え目にしたい」というお客様のご希望と、出来るだけ価格を抑えてということもあり、新たに羽毛を補充することはせず、洗浄・除塵後に残った羽毛だけを使ってリフォームをさせて頂きました。生地はコットン100%のソフトサテンです。
またキルトもダブルフェイスやツインキルトにするのではなく、年間を通じて使いやすい立体キルトで仕上げました。(と言っても単純な立体キルトではなく、色々工夫をしております)
910gでちょうど良いということであればそれが何よりですし、もし実際に使用してみて保温力が足りないということであれば、後から羽毛を足せばそれでヨシです。
※羽毛布団の場合、後から羽毛の量を減らすことは構造上至難ですが、羽毛を追加する分には簡単なのです。
N様ありがとうございました( ´∀`)