リフォームは羽毛布団の通信簿。購入価格に品質が伴っていない粗悪品なことも?
先日羽毛布団リフォームのご相談を頂いた時の話です。
リフォームをご検討されている羽毛布団は、お客様がご結婚された時にお母様が用意して下さった思い入れのあるお布団です。
【お預かりした羽毛布団】
メーカー:某A
使用年数:15~20年
サイズ:シングルサイズ
表生地(上層):絹100%
表生地(下層):綿100%
裏生地:綿100%
キルト:4×5マス立体
冬用:ホワイトグース95% 1400g
付き添いでいらっしゃったお母様のお話によると、当時購入されたお布団屋さんから「これが一番質のいいやつ」と勧められ、価格は1枚あたり30万円ほどだったそうです。
表側は絹の生地と綿の生地で二重になっており、摩擦に弱い絹の部分が裂けてしまっておりました。使用年数を考慮するとこれは致し方ないことです。
今回はお布団屋さんで購入されたものですので違いますが、この表側の生地が二重になっているタイプは訪問販売系の布団でしばしば見かけられます。
Q. なぜ表側の生地が二重になっているのか?
(以下、辛口な表現になります。お気を悪くされた方がいらっしゃいましたら申し訳ございません)
A. 身もふたもない言い方で恐縮ですが、特に布団としての意味はありません。
これは寝心地を良くするための工夫ではなく、布団の表面を絹の生地で着飾ることで、見た目を華やかにし、高額な価格設定に納得感を持たせるための工夫です。。。語弊のある表現かもしれませんが、つまりハッタリをきかせた布団ということです。ただし布団を機能面だけで語るのではなく、芸術品として見れば素晴らしい布団かもしれません。。。「いやそれは違う。あなたの認識は間違っている。」という方がいらっしゃいましたら、ぜひご指摘ください。
また中の羽毛を取り出してみると、品質的には悪いものではありませんでした。ですがこれが果たして30万円という価格に釣り合う品質かというと、それはそれで疑問が残るレベルのものでした。
品質表示のタグにはダウン95%と記載されていますが、スモールフェザーやネックフェザーの混入が目立ちます。20年近く使用されていて劣化が進んでいるとはいえ、当店が扱うダウン95%の羽毛とは随分と大きな差があります。それは素人目にも明らかに分かる違いでした。
それに何よりダウンの粒が小さくパワーがありません。実際に布団を見ても、1400g入りとタグに記載されている割には布団にボリュームがほとんどありません。
きっとお客様は大事に大事にお使いになってこられたのでしょう。布団自体に目立った汚れはなく、見た目のダメージからすると絹の生地の部分が断片的に裂けている程度。大切にされてきたということが一目で分かります。
つまり外見の傷みと、布団としてのボリュームのなさにギャップがあるのです。
大体中の羽毛がダメになってしまっている時は、生地の傷みもそれなりになっています。生地がキレイなのに膨らみがないというのは、得てして中の羽毛に問題がある時です。
消費者の方には布団の中身のことは分かりません。分からなくて当然です。布団を売っているお店側も中身を知らずに販売しているケースが多いわけですから。
30万円という価格が付いていれば、当然消費者の方は「この布団には30万円相当の価値のある羽毛が使われているんだろう」と思うでしょうし、10万円の値付けがなされていたら10万円相当の中身が入っていると思うでしょう。ところが今回のケースのように、どう考えても価格に品質が釣り合っていないということはよくあります。
知らぬが仏という言葉もありますので、お客様にこういった悲しい事実を伝えるべきかどうか悩むこともしばしばです。
「とても良いものだと思っていた布団が実はそうではなかった。」
こんなに悲しいことはありませんよね。
このようなことが少しでもなくなるよう業界全体で改善していかないといけないのですが、自浄作用が働かない業界なので期待しても無理かな。。。