寝具専門店がジャパネットたかたさんのダウンケットも買ってみた
数年前に書いたこの記事。
この記事は当店のお客様の疑問に答えるカタチで書いたものですが、アクセス数が想像以上に多く、このような情報を欲している方が世の中には多くいらっしゃるのだと再認識いたしまして、今回はジャパネットたかたさんのダウンケットを購入してレポートすることに。
東京西川(西川株式会社)も毎年ジャパネットたかた限定モデルの羽毛布団を販売しているので、機会があればそちらも購入してレポートしたいですね。
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さて、今回私どもが購入したダウンケットはこちら。
[メーカー]モリリン
[商品名]ヨーロッパ産洗えるダウンケット 2枚組
[サイズ]シングルロング
本体価格は2枚1セットで9,980円(税抜)でしたが、ここに送料も追加されるので総額は11,750円(税込)となりました。1枚あたりの価格は5,875円(税込)ですね。
【商品スペック】
[側生地]ポリエステル100%
[詰め物]ダウン50% フェザー50%
[詰め物重量]0.2kg
目次
羽毛について
ジャパネットさんはこのダウンケットのことを、ヨーロッパ産のダウンを使用した高品質なダウンケットと宣伝しています。この高品質という言葉には明確な基準がありませんので、どんな品質のものも売り手側が高品質と言い張ればそれは高品質なものだということで通ってしまうのですが、はてさて真相はいかに。
<ダウン率の意味>
羽毛製品(布団やダウンジャケット)の品質表示を見ると、ダウン90%だったりダウン85%という記載があります。この数字は中綿全体に占めるダウンの割合を示していて、ダウン80%という表示なら残りの20%はフェザー(羽根)が入っているよということです。
(ダウン50%のものが1000gなら、500g分がダウンで、残りの500gがフェザーとなります。)
左:ダウン、右:フェザー
しばしば羽毛布団と羽根布団を同じものだと思っている方もいらっしゃいますが、ダウン率が50%以上のものを羽毛布団といい、ダウン率が49%以下のものを羽根布団というので、この二つは完全なる別物です。
ダウン(羽毛)が半分以上なら羽毛布団、フェザー(羽根)が半分以上なら羽根布団。
簡単ですよね。
ちなみにフェザーと一口に言っても、ラージフェザーやスモールフェザーというように色んな大きさのフェザーがあり、フェザーの市場価値はほとんど皆無でして、ダウンとは比べ物にならないほどの価格差があります。(フェザーは激安)
いずれも全てフェザー
<ダウンケットの中身>
さてここでジャパネットたかたさんのダウンケットに話を戻すと、このダウンケットのダウン率は50%です。
ダウン率50%以上のものを羽毛布団、49%以下のものを羽根布団と呼ぶわけですから、このダウンケットは羽毛布団と表現できる最低ラインの中身を使用しているわけですね。
これより1%でもダウンの割合が減ってしまったらもうダウンケットとは言えずに、フェザーケットということになってしまいます。
そして実際にジャパネットたかたさんのダウンケットから取り出した中身がこれらの写真です。
ううむ…!予想よりゴリゴリのフェザーが沢山!スモールフェザーだけでなく、ラージフェザーもかなりの割合で含まれていますね。
フェザーの厄介なところは、軸の先が固く尖っているので生地を突き破りやすいというところです。布団から羽毛が飛び出るというのはできる限り避けたいことですから、高品質を追求すればするほどフェザーの割合は減っていきます。
フェザーが布団から飛び出ている様子
まだ使用して間もないのに布団から羽毛のようなものが出てくるという場合は、フェザー(もしくはファイバー)が多く混入している=質の悪い羽毛を使っている可能性が高いので要注意。
また比較対象としてご覧頂きますと、こちらが快眠屋のダウンケットに使用している羽毛です。
ダウン率は95%で、パッと見ではフェザーがどこにあるか分からない程度です。
ダウンケットの中身(ダウン率50%)
改めてダウン率50%のものと見比べて頂くとその差がお分かり頂けるかもしれません。
何をもって高品質とするかは非常に難しいのですが、個人的な感覚からすると、一歩間違えれば羽根布団になってしまうものを高品質と表現するのはやや無理があるのではないかと思います。この辺りの判断は企業姿勢が問われる部分ですね。
生地について
このブログでも何度も何度も訴えてきたことですが、羽毛布団の快適さを左右するのは羽毛ではなく、その羽毛を包んでいる生地です。
例えば羽毛の宝石と呼ばれるアイダーダックの羽毛でも、ビニールのように空気を通さない生地で包んでしまったら、羽毛の吸湿発散性は台無しになり、羽毛の心地よさは得られません。これではビニール手袋のなかで寝ているようなものですから、寝床の中がジメジメと蒸れて不快指数が高まるばかり…。
羽毛のチカラを引き出すためには、羽毛の呼吸を妨げないような通気性に優れた生地を使う必要があります。
身体から出る水蒸気をスムーズに羽毛に伝え、その水蒸気を羽毛から空気中にスムーズに移動させるには、ビニールのような通気性に乏しい生地では難しいのです。
特に日本の夏のようにジメジメとした時期に使う布団の場合は、尚更この生地の通気性が重要になってきます。
<ポリエステル100%の生地>
ジャパネットさんのダウンケットに使われている生地の素材はポリエステル100%です。
ポリエステルの生地は綿100%の生地と比べると、通気度が低い傾向にあります。
なぜか?
ポリエステルの糸は綿と比べると表面がツルツルと滑りやすく、ポリエステルの糸で生地を作ると中の羽毛がツルリと飛び出やすいという欠点があるからです。
綿100%の生地とポリエステル100%の生地を比べると、全く同じ通気度でも綿100%の方は羽毛が出ないのにポリエステル100%の生地は羽毛が飛び出やすいという現象が起こるんですね。
ポリエステル100%生地から飛び出したフェザー
となれば生地メーカーも、羽毛布団用のポリエステル生地は通気度をかなり控えめにして作らざるを得ません。
今回のジャパネットさんの生地の通気度が具体的に幾つなのか、というのは検査機関に回してみないと分かりませんが、一般的には羽毛布団用のポリエステル生地の通気度は0.5~1.0cc/㎠/s程度のものが多いようです。
一方で綿100%の生地の通気度は概ね1.5~2.0cc/㎠/s程度なので、最大で4倍ほどの通気度の違いがあります。
通気度が低い生地ほどビニールに近づいていきますから、ポリエステルの生地がサラリと蒸れないというのは、些か誇張表現かもしれません。
尚、さらに深掘りすると綿100%の生地だったとしても、糸の太さやその織り方によって吹き出しリスクは変わってきます。
ドイツ製スーパーソフトバティスト生地
日本で多いサテン織(朱子織)の生地は、構造上羽毛が吹き出しやすいのであまり通気度を上げられません。その一方でヨーロッパに多いバティスト(平織)の生地は、サテンより吹きにくいので通気度を上げてもさほど問題にはなりません。
快眠屋の羽毛布団のコンセプトは「羽毛の吸湿発散性を最大限に活かす」ことですから、リフォームを除いてはバティスト系の生地を使うことが多いです。
ドイツ製のスーパーソフトバティストの通気度は驚異の5.0cc/㎠/s以上、国産最軽量のソフトバティストは3.0cc/㎠/s以上ですので、羽毛の吸湿発散性を最大限に活かすことが可能です。
ダウンケット全体の印象
こちらのダウンケットの第一印象は「え、ちょっと薄くない?」というもの(失礼でごめんなさい)
実物はかなり薄いです。一番分厚いところで2cm弱くらいでしょうか。いくら夏に使うダウンケットとはいえ、春から秋口まで使えると宣伝でおっしゃっていますので保温力的にかなり心配。(ダウンジャケットと同じで、基本的には厚みが増せば増すほど保温力は高まり、薄くなればなるほど保温力は低下します)
下の写真は快眠屋のダウンケットと比べたものです。
右側が快眠屋のダウンケットで、中の羽毛量はジャパネットさんと同じ200gです。ただ同じ200gと言ってもダウンの質・膨らむ力が大きく違いますので、実際の厚みもここまで差が出ます。
右側のボリュームがあるダウンケットでも、使う人の体質や住宅環境によっては春や秋口だと保温力的に物足りなさを感じる可能性があります。
今の時期(4~6月)なら上の写真のうち、左か真ん中くらいのボリュームが必要な方が多数派でしょう。(一番右側の保温力●○○○○○というのが快眠屋のダウンケットです)
快眠屋としての見解
・品質的には価格相応
・生地がポリエステルなので蒸れる可能性あり
・厚みが薄いので暖かさが物足りない可能性あり
快適さよりも価格を求める方にはいいのではないでしょうか。
ただより快適な睡眠環境を作り上げたい、より衛生的な寝具を揃えていきたいという方にはちょっとどうかなというところ。
また最近はどこのメーカーもダウンケットに関しては似たり寄ったりの出来なので、西川製なら大丈夫ということもありませんからご注意を。楽天で昭和西川のダウンケットを見ていたら目眩がしてきました。
近年どこの寝具メーカーも、企業として快適な眠りを提供するというご立派な理念を掲げられており、そのこと自体は素晴らしいと思うのですが、如何せん言っていることとやっていることが大きく違うのではないか?というのがイチ寝具専門店としての印象です。
大きな企業ともなると存続していくためにはプライドを捨ててまでも売上確保に走らないといけない時があるのでしょう。そしてその苦悩は私たちには想像もつかないような次元のことなのでしょう。ですがそれによりかろうじて生き永らえたとしても、その存続にブランドとしての意味はあるのか。かえって自分たちのブランド価値を毀損する結果に終わりやしないだろうか。余計なお世話かもしれませんが、そんな心配をしてしまうのです。
おっと話が脱線してしまいました。いけねえいけねえ。
最後までお付き合い頂き、本当にありがとうございました。
ちなみにこちらは快眠屋の羽毛布団やダウンケットについてのページです。文章が長く、マニアックな内容ですが、読み込んで頂ければ羽毛布団の本質がお分かり頂けると思います。