生地が破れて羽毛が出てきている山甚の羽毛布団をリフォーム
今回リフォームをさせて頂いた羽毛布団は広島県のお客様(T様)からご依頼頂いたものです。快眠屋のWEBサイトをご覧になり、「ここなら任せても大丈夫かも」と思って下さったそうです。ありがとうございます。
快眠屋ではT様以外にも遠方のお客様から羽毛布団リフォームのご相談を頂くことは多いのですが、「リフォームをする価値があるかどうか」や「リフォームのお見積もり」を正確にお伝えさせて頂くには、やはり実物を拝見させて頂くのがベストです。(中の羽毛を取り出して状態をチェックしたいので)
もしできましたら、送り方は何でも結構ですので、ぜひ私どもの元までリフォームを考えているお布団を送って下さいませ。(その際は事前にTELやメール、LINEでご連絡を頂けますようお願いいたします)
送るのはちょっと…という場合は、メールやLINEでお布団の写真を送って下さい。品質表示が読み取れる状態でしたら、そちらもお教え下さい。写真は布団を広げた状態のものと、四つ折りにした状態のもの、あとは襟元など汚れやすい部分を撮影したものを頂けますと幸いです。
あとは使用年数や日常のお手入れ方法を教えて頂ければ、ある程度「リフォームする価値があるかどうか」の判断はできると思います。どうぞお気軽にご相談くださいませ。
LINE:LINEアプリで「快眠屋おの」と検索して頂ければ公式アカウントが出てきます。
<山甚製の羽毛布団>
【メーカー】山甚物産
【サイズ】ダブルロング
【羽毛】カナディアンホワイトグース90%
【羽毛量】表記なし
【側生地】綿100%
【キルト】立体5×5マス
送って下さった布団を拝見しますと、「生地が破れて羽毛が出てきてしまって……」と仰られていたように襟元の裏地がピリピリっと完全に裂けてしまっています。
汗や皮脂が染み込んだ生地は新品の状態と比べると耐久性が弱くなっていますので、「ついこの間までは何ともなかったのに、ある日洗濯しようとカバーを外してみたら中で羽毛が爆発していた。」というケースはよくあることなんですよね。実際に当店に寄せられるリフォームのご相談の30~40%は「生地が破れてしまって…」というものですから。
ちなみに絹交と言われるシルク混の生地なら10~15年、綿100%の生地でも20~25年も経つと高確率でこうなります。
生地が破れていても、中の羽毛自体が質の良いものなら、リフォームをすればまた10年長く使えます。ぜひ捨ててしまう前に当店にご相談ください。粗悪な羽毛が多くなっている現代では、下手な新品を買うよりもリフォームした布団の方が質が良いということが多々あります。
全体をチェックしてみると、上の写真のように襟元部分以外にも生地が破損している箇所が散見されました。やはり生地の寿命ですね。
<中の羽毛の状態は?>
羽毛を取り出してみると、20年前後使用されているということもあり、新羽毛と比べると流石に劣化が進んでいます。
具体的にはこのような状態です。
「汗や皮脂が染み込んで羽毛が汚れ気味 → 羽毛がベタついて膨らみにくくなっている」
「スモールフェザーにベタついた羽毛が完全にくっついて団子状態になっている」
「羽毛が千切れてファイバーと呼ばれるゴミが増えている」
とはいえ、この程度の傷みであればプレミアムダウンウォッシュ(しかも温水洗浄)で十分にパワーは戻ります。ですのでT様にはリフォームをオススメさせて頂きました。
ただしこの時点では1つ謎がありまして、お布団の品質表示に羽毛の充填量が全く記載されていないんですよね。新品の布団なら「1.8kg」だとか「800g」というように羽毛の量が記載されているはずなんですが、この布団にはそれがない。。。うーむ。。。
<リフォーム後>
【取り出し羽毛】約1950g
【プレミアムダウンウォッシュ後】約1650g(−300g)
【補充羽毛】DP420 中国産ホワイトグース93% 350g
【新側生地】ソフトサテン
【キルト】変形5×6マス
【仕上げ羽毛量】2000g
【リフォーム総額】66,750円+税
布団を解体したところ、取り出せた羽毛は1950gでした。謎だった羽毛の充填量がここでようやく判明しました。この量から恐らく元々は2000gほど羽毛が入っていたのだと推察できます。
そして洗浄・除塵後に残った羽毛量は1650g。元量に比べてマイナス300g、つまり約15%減ったということですね。
新たに使用する側生地は綿100%のソフトサテンをご提案させて頂きました。元々の羽毛布団自体はノーマルのサテンクラスの生地が使われておりましたが、より軽量なソフトサテンの方が羽毛の膨らむ力を邪魔しないからです。
サテンとソフトサテンの価格差はダブルサイズで4,200円ですので、10年使うと考えると年間にして400円の差。たった400円で実際の使用感は大きく変わりますので、もしご予算が許すのであればソフトサテンをオススメいたします。
キルトは変形の立体5×6マスです。胴体部分はマスを大きくして保温性を重視し、羽毛が偏りやすい襟元は細かく仕上げています。
補充羽毛については、コストパフォーマンスの高い中国産のグースダウン93%をオススメさせて頂きました。同クラスのロシア産やポーランド産に比べるとリーズナブルですので、産地よりも質と価格を重視する方にはうってつけです。名前だけが一丁前で、品質が全く伴っていない粗悪なヨーロッパの羽毛を使うよりも、こちらの方がよほど質は上。
元量に戻すことをご希望されたため、この羽毛を350g補充して2000gで仕上げさせて頂きました。
次の出番は今年の秋以降でしょうが、きっとご満足頂けると思います。
T様、ありがとうございました( ´ ▽ ` )
<あとがき>
実は今回のリフォームは一度完成はさせたものの、その仕上がりに納得がいかず、そのワケをT様にお伝えしてもう一度やり直しをさせて頂いたのです。そのため通常よりもかなり時間がかかり、T様には大変ご迷惑をおかけしてしまいました。
そのワケとは羽毛布団の生地のこと、今回で言えばソフトサテンのことです。
羽毛布団の生地は、最終仕上げに高温のプレスをかけて生地の織り目を潰すダウンプルーフ加工というものを施します。
ただこのプレスのさじ加減は非常に繊細なもので、同じ品番の生地でも生産ロットが違うとその柔らかさや肌触りが変わることがあるのです。特に細い上質な糸を使った生地の場合は尚更です。
今回最初に使用したソフトサテンは布団として仕上げてみると、「うーん、これはちょっとイマイチ…。」という出来。そこでこのクオリティではお渡しできないと判断し、新しい生産ロットの入荷を待ってから作り直すことにいたしました。T様には快くご了承を頂き、本当に感謝しております。
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