羽毛布団リフォーム事例[東京都K様]生地が破れて羽毛が出てきているクイーンサイズの冬用ダウナをシングルサイズにリフォーム
嬉しいことに当店のブログやYouTubeをご覧になった方々から、多数羽毛布団リフォームのご依頼を頂いております。拙い文章、映像で恐縮ですが、ありがとうございます。
今回は千葉県のお客様(K様)からご依頼いただいたダウナのリフォーム事例をご紹介いたします。動画も掲載する予定なのですが、なにぶん不慣れな作業でして、それを待っているといつまでも掲載できないということになりかねないので、ひとまず写真でのご紹介です。
※遠方にお住まいで羽毛布団のリフォームをお考えの方はこちらのページをご覧ください。
(ダウナの過去のリフォーム事例については以下のYouTube動画、ブログにてご覧いただけます)
目次
リフォームを考えたきっかけ
ダウナのご相談で多いのが「生地が破れてしまった」「羽毛が大量に出てきた」というものです。
今回のK様もまさにそのケース。13年前後のご使用ということでしたが、写真のように衿元部分が数ヶ所裂けてしまっていました。
ダウナのデメリット
ダウナの最大のデメリットは生地の破れやすさ、羽毛の吹き出しやすさです。
なぜダウナの生地は破れやすく、羽毛が吹き出しやすいのか。
その原因の一つに打ち込み本数の少なさが挙げられます。
一般的に羽毛布団の生地は羽毛の吹き出しを防ぐためにできるだけ高密度に織り上げる=打ち込み本数を増やすのがセオリーですが、ダウナの生地は羽毛布団の生地でありながら比較的打ち込み本数が少なく、密度が粗めです。
具体的に数字を挙げると、ダウナの打ち込み本数が295本であるのに対して、当店が扱う日本製のソフトバティストは351本、バティストは320本となっています。(ダウナと同じドイツ製のプレミアムバティストであっても348本です)
生地の強度は素材や糸の太さ、織り方によっても変わってくるので一概には言えないものの、基本的には同じ太さの糸であれば打ち込み本数が少ないほど強度が低下する傾向にありますので、この点が生地の破れやすさにつながっているのは間違いないだろうと思われます。
ダウナのメリット
ただしその一方でダウナの生地にはメリットもあります。
それは糸の太さの割に生地が軽く柔らかく仕上がっているというところ。
例えば全く同じ糸を使って平織りの生地を仕上げた場合、打ち込み本数が増えれば増えるほど生地が重く硬い風合いになりますが、ダウナのように打ち込み本数を減らせば軽くて柔らかい風合いの生地を仕上げることができます。
実際に日本製のバティスト生地は打ち込み本数が多いので生地が丈夫な反面、ダウンプルーフの強さもあいまってダウナよりかなり硬い風合いとなっています。またダウナ以上に細い糸を使用しているソフトバティストであっても、軽さはダウナを上回るものの、柔らかさに関してはダウナにやや劣ります。
リフォーム前の状態
失礼な物言いで大変恐縮ですが、10年以上ご使用になっているだけあって全体的に使用感があり、生地の破れだけでなく布団としてのボリュームも低下しつつある状態です。特に生地が破れていた衿元部分の劣化が激しく、ヘタリが顕著です。
一方で足元部分はそれほどヘタリはありません。
四つ折りの状態で厚みを測ってみましたが、30〜35cmほどの厚みになっており、冬用として考えるとやはり物足りない印象です。
羽毛を抜き取ってみると
今回は足元部分と衿元部分とで羽毛の傷みに大きな差があると予想されましたので、足元部分と衿元部分の両方から羽毛を抜き取って状態を調べてみました。
こちらがダウナから取り出した羽毛と、新品の羽毛を比較したものです。(すべて2.0gです)
やはり足元部分と衿元部分には差がありました。足元の羽毛はまだボリュームが有りファイバー化も進んでいませんが、衿元の羽毛はかなりボロボロになっています。もし仮に布団全体が衿元部分の状態になっていたらリフォームはオススメしていないでしょう。
ただ今回は「元々の羽毛がある程度成熟した質のいいもの」ということと「全体の半分以上は足元部分並みの状態と予想される」ことから、リフォームをさせて頂きました。
リフォーム作業
洗浄・除塵後
こちらが洗浄・除塵作業(プレミアムダウンウォッシュ方式)を行なった後の羽毛です。流石に完全にファイバーを取り除くことはできませんでしたが、洗浄・除塵作業である程度パワーが復活してくれました。尚、ダウナから取り出せた羽毛量と、その羽毛を洗浄・除塵した後の量は以下の通りでした。
【取り出し羽毛】
約1410g
【洗浄・除塵後】
約1250g
羽毛の吹き込み
今回のリフォームはクイーンからシングルへのサイズダウンということもあり、新たに羽毛を補充することはしませんでした。というわけで洗浄後に残った羽毛をシングルサイズの側生地に吹き込んでいきます。
使用した生地は日本最軽量のソフトバティストです。ダウナほどのしなやかさはないものの、ダウナよりも軽量でなおかつ丈夫です。また通気度もほどほどですので、ダウナの生地に比べると羽毛の吹き出しリスクも抑えられます。(※使い心地のことだけを考えるならドイツ製のプレミアムバティストがベストですが、羽毛の傷みと吹き出しリスクのことを考えると難しいケースがほとんどです)
羽毛を吹き込むにあたっては、同じマスの面積であっても傷みやすい襟元部分や、保温力が必要な中央部分は羽毛を多めに充填するなど1マスずつ羽毛の充填量を変えています。
リフォーム完了
こちらがリフォーム後の状態。
今回は洗浄・除塵作業後に残った羽毛だけを使用してリフォームをしましたが、リフォーム前に比べて圧倒的にボリュームが復活しているのがお分かりいただけると思います。
また布団としてのボリュームが復活しただけでなく、「ダウナの掛け心地をある程度残しつつ、羽毛の吹き出しを最小限に抑える」というコンセプトのリフォームですので、使い心地に関してもご満足いただけるはずです。
K様ありがとうございました。
ダウナのリフォームをお考えの方へ
ご存知のようにダウナは日本の一般的な羽毛布団とはコンセプトを異にする羽毛布団です。日本の羽毛布団が「できるだけ羽毛の吹き出しを抑えること」に重きを置いているのに対して、ドイツ製のダウナは「羽毛の吹き出しは些細な問題で、それよりも快適性をとにかく追求している」というイメージです。
したがってダウナのリフォームを考える場合は、どういったコンセプトでリフォームを行うかが非常に重要になってきます。
- 軽さや蒸れ感が低下してもいいから、とにかく羽毛が出てきにくい布団にリフォームして欲しい
- ダウナの掛け心地を気に入っていたから、とにかくダウナと同じような布団にリフォームして欲しい
- ダウナの掛け心地をある程度残しつつも、ダウナより羽毛が出てこない布団にリフォームして欲しい
これら1〜3のうちどのコンセプトをお選びになるかによって、私どもからの提案内容が変わってまいりますので、ダウナのリフォームをお考えの方はぜひお気軽にご相談ください。