2018欧州出張『ドイツ、オーストリア、ポーランドを周る』part.5
ハイム最終日の12日は夕方のフライトでポーランドのクラクフに向かう予定になっていたので、ハイム会場をお昼過ぎには後にし、空港に向かう。
なぜクラクフなのか?
クラクフにはポーランド最大手の羽毛サプライヤーであるANIMEX社の羽毛精製工場がある。ありがたいことに今回その工場を見学させて頂く機会を頂いたのだ。また同時にクラクフ近郊にあるマザーグース農場に伺う機会も設けて頂けた。有難や有難や。日本にいて、大手メーカーからの説明を聞いているだけでは分からないことが沢山ある。というかよほど勉強している営業マンでもなければまともな情報はほとんど持っていない。そのことを思えば、現地のナマの情報を手に入れられる機会を逃す手はない。
農場に向かう道中、周囲を見回しても見えるのは地平線のみ。山がない。グースは足腰がそれほど強くないので、起伏の差が激しい地域は飼育に向かないのだ。今年は例年に比べ暖かいようで、例年に比べると雪も少ないそうだ。と言っても外に出ると凍てつくような寒さが身体を襲う。ドイツとここまで気候が違うのか。
サイダックさんのマザーグース農場では約1,400羽のマザーグースを飼育している。(この中の約20% がオスで残りの80%が卵を産むメス)
マザーグースやレギュラーグースについての詳しい話はまた後日。
サイダックさん一家から話を伺うために、家の中にお邪魔するとそこには案の定ウォッカが。。。以前中国の吉林省を訪れた時も「カンペェ!」の号令の下に、何度も何度も40度くらいのお酒を飲まされたのだけど、ここポーランドの地でもやはり同じ洗礼を受けることに。くぅ〜〜〜キクゥ〜〜〜〜(ヘロヘロ)。
サイダックさんありがとうございました。
ANIMEXには日本語が堪能なスタッフが二人いらっしゃる。ソセンコ部長とリサコウィスキさんだ。リサコウィスキさんの流暢な日本語には驚いたが、ソセンコ部長はさらにその上をいく。
お二人からは色々と興味深い話を聞かせて頂いた。例えば「ポーランドで飼育されているダックの多くは中国と同じ北京種のものだから、それほど質がいいものではない」ということや、「日本のインターネット通販ではポーランド産のマザーダックという名前で羽毛布団が売られているが、ポーランドにはマザーダックの原料というのは存在しない(はず)」ということとか。
というのも、確かに卵を産む母鳥としてのマザーダックは存在するが、このマザーダックはマザーグースとは違い食肉用のものなので、マザーグースのように5年間飼育されるということはなく、1年未満で食肉用として屠殺されるということなのである。
つまりマザーグースのように長期に渡って飼育されるということではないから、羽毛の質としてもそれほど良くは無いし、そもそもマザーダックとレギュラーダックは同じ屠殺場で同じように加工されるから、その時点で羽毛と羽根はごちゃ混ぜになってしまう。
このごちゃ混ぜになって羽毛原料からマザーダックの原料だけを選り分けることなどできないし、それに選り分けるだけのビジネス的なメリットも無いのだ。
となればマザーダックにこだわる意味もそれほど無いし、「それ本当にマザーダックなの?レギュラーダックも混ざってるんでしょ?しかも飼育数的にレギュラーダックの割合がほとんど全部なんでしょ?」ということにもなる。
恐らく一部の心無い業者が、ダックダウンを高く売るためにありもしない「マザーダック」という名前を付けて販売しているのだと思われる。もともとマザーダックなど無いという話は耳にしていたが、なるほど確かにその通りだ。アイダーダックのように高値で取引される原料ならまだしも、たかだかマザーダック程度の取引価格では、マザーダックの羽毛だけを選別するメリットがないのだ。
工場内は撮影禁止だったが、ANIMEX社のはからいで『手選別ステッキーホワイトマザーグースダウン98%』の仕上げをしているところを撮影させて頂くことができた。これは手作業で良いダウンだけを選別していく地道で過酷な作業だ。
また農場から羽毛の精製までを全て一元管理しているANIMEXならではの強みや、そのシステムを採用しているからこそ得られるメリットについても詳しくお聞かせ頂いた。
ハイムとケルンの間にクラクフをねじ込むことで、ハードな旅程になってしまったが、今回の出張で最も収穫が多かった街はこのクラクフだった。(ヴィエリチカ岩塩坑もバベル城も行けたしね)
ANIMEXの皆さん、本当にありがとうございました。
(続く)