ダウンパワーだけでは
本当の良し悪しは分からない
ダウンパワーだけでは
本当の良し悪しは分からない
AとBではどちらの方がダウンパワーが高い?
答えはBの羽毛です。
<Aの羽毛>
ベストオブポーランド手選別ステッキーマザーグース98%
DP440以上
<Bの羽毛>
中国産シルバーマザーグース95%
DP480以上
しかし実際にどちらが保温力と耐久性に優れるかというと、BではなくAの羽毛です。
羽毛の品質を判断する基準として、ダウンパワー(DP)という数値が寝具業界では採用されています。
そのため寝具売り場やインターネット通販では「この羽毛のDPは440だから良いものですよ。」「いや、うちのDPは460を超えていますよ。」というように、ダウンパワー競争に陥っているという現状があります。
羽毛は品質の良し悪しが分かりにくいものですから、こういった客観的な指標があること自体は望ましいことです。
しかしこのダウンパワーも全幅の信頼を置ける基準ではありません。実際に布団に仕上げてみると分かりますが、同じダウンパワーにも関わらず羽毛によって膨らみが全く違うことはよくあります。
また冒頭のAとBの羽毛のようにダウンパワーは低いはずでも、ダウンボールの大きさ・構造に着目してみると、ダウンパワーが低い羽毛の方が質が良いということもしばしばあります。
私自身もかつてはダウンパワーだけを頼りに羽毛の優劣を判断していた未熟な時期があったのですが、羽毛のことを理解すればするほどダウンパワーだけでは分からないということが分かるようになってきました。
ダウンパワー検査の問題点
現行の検査方式ではダウンパワーを測定する前に羽毛にスチームを当てる工程があります。この時、密度が低い羽毛は短時間でスチームの効果が全体に行き渡るので、ダウンパワーが底上げされやすいのですが、一方でダウンボールの密度が濃く、高品質な羽毛の場合はスチームの効果が浸透する前に検査をすることになり、不利な状態でダウンパワーを計測することになります。
つまり核が大きく、羽肢の濃い羽毛ほど本来の性能よりもダウンパワーが低くなり、あまり質の良くない羽毛ほど本来の性能よりもダウンパワーが高くなる傾向にあるというわけです。
ステッキーダウンの存在
極めて例外的な存在ではありますが、羽毛の中にはステッキーダウンという特殊な羽毛があります。「ステッキー=粘りがある」という意味で、ステッキーダウンは羽毛同士が絡み合うため熱を逃がしにくく、保温性に優れるという特徴があります。アイダーダックダウンがステッキーダウンの最たる例ですね。
しかしステッキーダウンは極めて高い保温力を持つ一方で、羽毛同士が絡み合うため普通の羽毛に比べてダウンパワーが高く出にくいという特徴があります。
実は冒頭のAの羽毛はステッキーダウンです。そのため実際は圧倒的な保温性や耐久性を持つにも関わらず、ダウンパワーは低いという事情があったわけです。
トータルで判断
また残念ながら、ダウンパワーの高い羽毛を使っているからといってその布団が快適だという単純な話ではありません。
この辺りの話はこのページで詳しく説明をしていますが、どれだけ質の良い羽毛を使っていても、詰め込む量が間違っていたり、生地に問題があれば気持ち良くは眠れないのです。
快適に眠るための布団を探しているはずが、色々と調べているうちにいつの間にかダウンパワーの高い布団をお値打ちに買うことが目的になっている。というのではあまりに本末転倒な話です。
快適な布団をお求めなのでしたら、ダウンパワーだけでなく、生地の素材や性質、布団としての厚みなども総合的に判断しなくてはなりません。