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寝具専門店がジャパネットたかたさんの羽毛布団を購入してみた

店頭で羽毛布団の接客をしていると、多くのお客様から「なぜおたくの羽毛布団はジャパネットたかたより高いのか?」というご質問を頂きます。これはごもっともな話で、羽毛布団の専門家ではない一般のお客様が、同じ羽毛布団なのにどうしてこれほど価格が違うのか疑問に思われるのも無理はありません。
これまではジャパネットたかたさんのWEBに載っているスペック表を元にその違いを説明させて頂いておりましたが、違いを説明する上でも、そしてお客様に違いをご理解して頂く上でも実物があった方がいいだろうということで、今回ジャパネットたかたさんの羽毛布団を購入することになりました。
オタク感溢れる長文に仕上がってしまいましたので、途中で脱落される方もいらっしゃるかもしれませんが、最後までお付き合い頂けますと幸いです。
ですが結論だけを先に述べさせて頂くと『羽毛布団としての設計思想が根本的に違う』ということに尽きるかと思われます。
 
さて購入させて頂いたジャパネットさんの羽毛布団のスペックはというと
・羽毛:ヨーロピアンホワイトダック85% 1.1kg
・側生地:ポリエステル85%綿15%
・キルト:3×5マス立体
※羽毛は日本羽毛製品協同組合が定めるところのエクセルゴールドラベルクラスに相当するとのこと。
 
ジャパネットたかた羽毛布団 ジャパネットたかた羽毛布団
 

1.側生地について

ポリエステル混の生地が使われる理由

まず生地について。。。
こちらの羽毛布団にはポリエステル混の生地が使われています。
昨今ではジャパネットさんに限らず、この価格帯の羽毛布団ではポリエステル混の生地を使うことが当たり前です。最近では中級価格帯のものですらポリエステル混の生地が増えていますね。それは大手老舗メーカーも例外ではありません。
なぜポリエステル混の生地が増えているのか。それには世界の食肉事情の変化が関わっています。
ご存知でない方が大多数かと思われますが、羽毛に使われる水鳥(グースやダック)は天然の鳥ではなく99%以上が食肉用に飼育されている家禽です。あくまで食肉がメインで羽毛は副産物です。ところが近年世界の食肉事情が変わりつつあり、水鳥の飼育量が減ってしまいました。タンパクなグースやダックに比べ、ジューシーな陸鳥(チキン)が求められるようになってきたのです。
水鳥の飼育量が減れば当然羽毛の量も減ります。しかしダウンジャケットや寝具の素材として羽毛の需要は依然高いまま。。。需要に対して供給が追いつかなければ価格は上がります。一時期ほどではありませんが羽毛の価格は10年前に比べると随分と値上がりしているのです。
そこでポリエステル混の生地の出番となるわけですね。
一般的にポリエステル100%の生地やポリエステル混の生地は、従来の綿100%の生地に比べて価格が大幅に安いのです。(※もちろん例外もありますが)
羽毛が値上がりしたとしても、生地のコストを下げることで全体のバランスを調整すれば、値上がり前と同様の価格で羽毛布団を販売できるというわけです。
 

羽毛布団の心地よさは生地で決まる

しかし快眠屋ではポリエステル混の生地を使うことはありません。
私たちが使う生地は綿100%が大前提、その上でより軽量でしなやかで、さらに通気性の良いものをオススメしています。ポリエステル混の生地を使った方がずっと安く羽毛布団を販売できるにも関わらずです。
なぜでしょうか。
それは羽毛布団の使用感や快適さは、羽毛よりもむしろ生地の性能によって大きく左右されるからです。
羽毛布団に限らず全ての寝具に言えることですが、湿気をスムーズに吸収する吸湿性が寝具には強く求められます。人間の身体からは不感蒸泄という気体の汗と、発汗という液体の汗が放出されていますが、寝具に吸湿性がなければこれらの汗が寝床内部にいつまでも滞ってしまい、深い眠りを阻害する原因になります。
人間が快適に眠るためには寝床内の湿度を50%前後にコントロールすることが求められます。暑い寒いといった調温機能だけでなく、蒸れない環境を作るための調湿機能も必要だということです。
その点において、羽毛そのものは公定水分率が13%と非常に吸湿性に優れた素材だということに疑いはありません。(※ポリエステルは0.4%、アクリルは4%です)
そのためしばしば羽毛布団は蒸れない寝具だと表現されます。寝具専門サイトでさえもそういった文言を見かけることがあります。その度にめまいがしますが。。。
羽毛布団とは羽毛を生地で包んだものです。羽毛にどれだけ吸湿性があろうと、羽毛の周りを覆っている生地に湿気を通すだけの通気性と透湿性がなければ羽毛の性能は発揮されません。
こういった部分を考慮せずに、羽毛は吸湿性が良いんだ!だから羽毛布団は蒸れないんだ!と短絡的に考えるのは浅薄と言わずになんと言うのでしょうか。
どれだけ最上級の羽毛を使おうがその羽毛を包む生地に通気性がなければ台無しになってしまいます。
羽毛布団の快適さ(=蒸れない暖かさ)を決めるのは生地だということが少しはお分かりいただけたでしょうか。
 

ポリエステル混の生地は通気性に欠ける

快適な羽毛布団を作るためには、羽毛の吸湿性を活かす生地を使うことが大切です。羽毛の吸湿性を活かす生地とは、身体から放出される水蒸気をスムーズに羽毛にまで到達させる通気性に優れた生地のことです。
ではポリエステル混の生地の通気性はどれくらいあるのでしょうか。
生地の通気性を測る指標として通気度 (㎤/㎠/sec、以下ccと略)という単位があります。簡単に言えば1秒あたりにどれだけ沢山の空気が通過するかというもので、数字が大きくなればなるほど通気度は高くなります。
一般的にポリエステル混生地の通気度は0.5cc〜1.0ccのことがほとんどです。
それに対し綿100%の生地の通気度は概ね1.0cc〜2.0ccとなります。つまり約2倍の通気性を持つということになります。
ちなみに快眠屋でオススメしているスーパーソフトバティスト生地は5.0cc以上、ソフトバティスト生地は3.0cc以上となっています。
※通気性が高く蒸れないと言われている綿100%のゴアテックス生地で2.2cc前後です。
つまりポリエステル混の生地と綿100%の生地では通気度に最大で10倍ほどの差があるということです。
【豆知識】
通気度は生地に施すダウンプルーフ加工のレベルで決まります。ポリエステル混の生地に使われる糸は綿よりもツルツルとしていて摩擦が少ないため、羽毛が吹き出しやすく、ダウンプルーフ加工が強めにかけられています。ダウンプルーフを強めにかけた生地は通気度が低下するので、吹き出しは防げる反面、羽毛の吸湿性を損ないやすくなります。

その一方で綿100%の生地はそれほど強くダウンプルーフを施す必要性がありません。特に平織りの生地は朱子織(サテン織り)に比べてさらに吹き出しにくいので、ダウンプルーフが弱くても問題がそれほどなく、通気度が高い生地に仕上げやすくなっています。
 

ポリエステル混の生地は蒸れやすい

以上の数値からも分かるように、ポリエステル混の生地は通気性に乏しいため、羽毛の優れた吸湿性を活かすことが難しいのです。
ポリエステル混生地は通気性が低い→通気性が低いと水蒸気を通しにくい→羽毛の吸湿発散性を活かせない→不快な蒸れ感が生まれる
簡単な話ですね。
快適な羽毛布団を作ろうと思うなら、ポリエステル混の生地は使えない、いえ使ってはいけない。この先技術の進化が起これば話は変わってくるかもしれませんが、少なくとも現時点では私たちはそのように考えています。
もちろんこのことについては使い心地の良さよりも価格が安いことを望む方も沢山いるでしょうから、私たちが正しいというつもりは全くありません。最終的なご判断は消費者の方々が下していただければ結構です。
 

2.キルト(縫製)について

1マス(ブロック)あたりの面積が大きい

羽毛布団は、羽毛が中で移動して片寄らないように内部に間仕切りが入っており、その間仕切りによってブロック状の構造になっています。例えば4×5マス立体ならば、横に4マス縦に5マスで合計20マス(ブロック)に中が分かれているということ。
つまり布団のサイズが同じなら、マスの数が増えれば増えるほど1マスあたりの面積は小さくなり、マスの数が少ないほど1マスあたりの面積は大きくなります。
最適なマスの数は、中に入れる羽毛の量や求める保温力によって変わってきますので、「これが正解!」というような決まったものはありませんが、マスの大小には以下のような傾向があります。※実際にはブロックの高さ=マチ高によってもさらに変わってきます
(キルトについてはこちら)
 
大きいマスの特徴(=マスの数が少ない)

①ボリュームが出やすく、保温力が高まる
②身体にフィットしにくい
③1マスの中で羽毛が片寄りやすい
 
マスが小さい(=マスの数が多い)

①ボリュームが抑えられるので保温力は低め
②身体にフィットしやすい
③羽毛が片寄りにくい
それぞれにメリット、デメリットがあるということがお分りいただけるでしょうか。そのため快眠屋では使用する羽毛のダウンパワーや充填量、側生地の軽さ、求める保温力によって、以下のようにマスの大きさや数を調整して羽毛布団を作っております。

しかし正解はないと言っても、これでは明らかにマズイだろうというケース(あくまで快眠屋判断)もございます。
例えば今回のジャパネットさんの3×5マスというように、「マスの数が少なすぎる=マスの面積が大きすぎるキルト」を私たちが採用することはございません。
詰め込む羽毛の量に対してマスが大きすぎると、マスの中がスカスカになってしまいマスの中で羽毛の片寄りが起こるからです。この片寄りは年数が経ち、羽毛のふくらみが弱くなってくるとさらに顕著になります。
どこまでの片寄りを許容するかはお店それぞれによって違うかもしれませんが、快眠屋基準ではこの片寄りはあってはならないレベルです。
ではなぜ3×5マスの羽毛布団が販売されているのか?
それは縫製コストを下げるためでしょう。
マスの数が少なければ少ないほど材料費も縫製の手間も削減できますから、より安く布団を販売することができます。一般消費者の方には分かりにくい部分ですので、おそらく真っ先に削減される要素でしょう。コスト重視で羽毛布団を作るなら致し方ない部分ですが、キルトの違いには実はそういった違いがあるのです。
新品の時の使い心地、暖かさを長年キープし続けるためには、羽毛のパワーや量に適したキルトで布団を作らねばなりません。
 
 

3.羽毛の違い

ダウンボールの大きさが違う


次に羽毛のお話を簡単に。
1枚目の写真がジャパネットたかたさんの布団から取り出したヨーロピアンホワイトダックダウンです。2枚目の写真が快眠屋がオススメしている白翎ステッキーグースダウンです。そして3枚目がそれぞれの大きさを3粒ずつ比較したものです。
ダウンボールの大きさに注目してみてください。一粒一粒の大きさの違いが分かっていただけると思います。ダウンボールの大きさは耐久性やあたたかさに直結する部分です。
基本的にはダウンボールが大きくなればなるほど、たっぷり空気を含むことができるので保温力は増します。そしてダウンボールが大きくなればなるほど、羽毛がボロボロになりにくく、耐久性が向上します。
布団の価値は10年経った後に分かるという話を業界の先輩から聞いたことがあります。買った直後は同じようなあたたかさでも年数が経つとその良し悪しがハッキリとするということです。10年経った後に、あそこで買った羽毛布団はやっぱり違うねと、そう言って頂きたい。自己満足かもしれませんが、私たちはそんな羽毛布団を提供したいとも思っています。
 
 
上述したこと以外にもまだまだ沢山の違いがあります。羽毛の洗浄レベル、羽毛のニオイの有無、生地の縫製などなど。
むやみやたらに私たちが高い値段を設定しているわけではないということがお分り頂けたでしょうか(汗)
同じ羽毛布団という名前であっても、その素材・設計思想が根本的に違うのです。
快眠屋は安くて売りやすい羽毛布団よりも、使って心地のいい羽毛布団を売りたいと思っています。そしてその先にある快適な眠りを売りたいと思っています。しかしながら心地よい羽毛布団を作るにはそれ相応の素材と技術が必要です。そしてそれにはそれ相応のお金がかかります。
なぜ価格が違うのか。店に来ていただければ何時間でもご説明させていただきます。ブログでは表立って書けない違いも店頭ではお話しします。もちろんメールでも結構です。お気軽にお尋ねください。
 
そして最後に誤解して頂きたくないのは、私たちにこの記事を書くことによってジャパネットさんの羽毛布団をけなすつもりは全くないということです。もし産地偽装や、不当な価格で販売しているというのであれば問題ですが、それなりの品質のものをそれなりの価格で販売する。至極当たり前のことです。業界全体のことを考えるなら、もう少しだけ羽毛布団の本質についてCM内でも説明をして頂ければ嬉しいなとは思いますが、ジャパネットさんは寝具メーカーではありませんからそれを期待するのもおかしな話ですもんね。
何度も繰り返しますが、最終的なご判断を下すのは消費者の皆様です。ただし正しい判断を下すためには、正確な情報が必要です。その思いで今回この記事を書きました。少しでも皆様の羽毛布団選びのご参考になれば幸いです。
 


 
快眠屋の羽毛布団についてはこちらをご参照ください

羽毛布団


 
 
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