夏の寝具に本麻の近江ちぢみをオススメする理由
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日本の夏はなぜ寝苦しいのか
ガシャンガシャンガシャン。工場に入ると、織機が元気に動いている音が聞こえてくる。コロナ禍が続き、どうなることかと思ったが、今年も滋賀県の麻工場さんに快眠屋オリジナルの麻生地を織ってもらうことができた。これで安心して夏を迎えられる。麻は良いものだ。とても良いものだ。特に日本の夏には最良だ。
なぜ麻がいいのか。それを理解してもらうためには、まず日本の夏が寝苦しい理由を知ってもらわなければならない。「そんなの暑いからに決まってるじゃん」というお声が聞こえてきそうだが、暑さ以上に厄介な問題がある。それは「ジメジメとした湿度の高さ」である。
例えば同じ室温28度でも湿度が50%前後であれば不快感は少ないが、これが70~80%まで湿度が上がると一気に不快感が高まり、寝つきの悪さや中途覚醒といったトラブルが多くなる。我々人間は想像以上に湿度の影響を受けているのだ。
夏の熱帯夜をできるだけストレスなく乗り切るためには、「暑さ」に加えてこの「不快な蒸れ感」をいかに解消するかが重要になってくる。
Q-max値がウリの冷感寝具はどうか?
その点、いわゆる流行りの冷感寝具はどうだろうか。店頭にサンプルが置いてあって触るとヒンヤリするアレである。この触った時の冷たさ(接触冷感)はQ-maxという値で表され、Q-max値が高い寝具ほどヒンヤリ感が強い。メーカーがこぞってQ−max値を競うのはそのためだ。
このような冷感寝具は基本的にナイロン、ポリエチレン、ポリエステルといった石油由来の化学繊維でできている。
これらの素材は高い冷感が得られる一方で、吸湿性・吸水性が致命的に低い。しかも中綿もポリエステルが大部分を占めているので全くと言っていいほど湿気を吸わない。肝心の「不快な蒸れ感」を解消することは難しい。寝始めはひんやりと快適でも、じきに不快な蒸れ感が襲ってきて眠りが浅くなってしまう。睡眠は短距離走ではなく一晩を通しての長距離走だから、最初の数分が快適でも意味がないのだ。
これが快眠屋が石油系の接触冷感寝具をオススメしない理由である。
麻が最適な理由
そこで麻の出番となる。麻にも種類は多くあるが、なんといっても麻はおしなべて吸湿性と吸水性が高い。とても高い。公定水分率で比較すると、麻はナイロンの約2.6倍、ポリエステルの30倍もあり、化学繊維と比べるとスムーズに大量の汗を吸収してくれる。
また麻は自然素材の中で最も熱伝導性が高く、体温を逃しやすいという特徴もある。つまり麻は「不快な蒸れ感を解消する吸湿・吸水性」と、「肌に触れた瞬間のヒンヤリ感」の両方をバランスよく兼ね備えた、日本のジメジメした夏にうってつけの素材なのである。(麻には生分解性があるのでSDGsの観点からも望ましい)
我々が夏の素材として麻を推す理由がお分かり頂けただろうか。
ただし麻なら何でもいいと言うわけではない。例えば、同じ麻でもラミー(苧麻)とリネン(亜麻)では肌触りが違うから、自分の好みに合ったものを使うことが大切だ。(基本的にラミーの方がシャリ感が強い)
それに原料の質や紡績技術がお粗末な低グレードな麻だと、生地に仕上げた時にチクチク感が生まれ肌触りが悪くなる。これではとても快適には眠れない。
麻の中でも抜群の清涼感をもつ本麻近江ちぢみ
ただでさえ快適な麻の寝具だが、その中でも抜群の清涼感を持ったものがある。
それが本麻の近江ちぢみを使ったクールパッドとクールケットである。
近江ちぢみとは、滋賀県の琵琶湖の湖東地区(近江)に伝わる伝統技法、及びその伝統技法によって生み出された加工品(生地)のことを指し、最大の特徴は生地をちぢませることで生まれた独特のシボ(凹凸)にある。
(※最近はコストダウンのために麻以外の近江ちぢみも増えてきたが、あくまで我々がオススメするのは麻100%(本麻)の近江ちぢみである。誤解なきよう。)
先に述べたように、麻という繊維はそれ自体が高い吸湿発散性と接触冷感を持っているが、近江ちぢみはその独特のシボのおかげで肌にぺったりと張り付くことがなく、より高い清涼感を得ることができる。実際に使ってみると、他の素材には到底真似のできない爽やかさを感じられるはずだ。
近江ちぢみの欠点
欠点がないものなど存在しないが、それは近江ちぢみも例外ではない。
近江ちぢみの最大の欠点は価格の高さであろう。ただでさえ麻は化学繊維よりも高い。綿よりも高い。それが近江ちぢみともなるとさらに価格が上がり、大手老舗寝具メーカーの製品ともなるとシングルの敷きパッドで4〜5万円で販売されている。確かにそれくらいの価値があるのは間違いないが、そうは言ってもここまで値が張るとそう簡単に手が出せるものではない。
そこで快眠屋では少しでもリーズナブルに近江ちぢみをご提供できるように、メーカーから商品を仕入れるのをやめ、直接滋賀県の麻工場に頼み込んでオリジナルの麻生地を織ってもらっている。メーカーから1枚単位で商品を仕入れるのとは違い、責任を持って全量を買い取る契約を結ぶわけだから、在庫リスクはある。あるが、その甲斐あって大幅にお安く提供できるようになった。
まだ近江ちぢみを使ったことがないという方は、ぜひこの夏は近江ちぢみの寝具を使ってみて欲しい。