羽毛布団リフォーム事例［東京都T様］35年前のドイツ製羽毛布団ダブル1枚をシングルのツインダウンスタイルにリフォーム（ダブル1枚→シングル2枚）
言い訳を並べるようで恐縮ですが、ここのところ納品やDM作製、その他諸々の作業に追われ、ブログの更新が非常に滞っております…。これではいかん！と思ってはいるものの、なにぶん当店の広報活動は僕一人のワンオペなのでなかなか難しい…。
目次
東京のお客様からのご依頼
東京にお住まいのお客様(T様)から羽毛布団リフォームのご相談を頂きました。
ご相談内容を要約すると「ほとんど使っていないダブルサイズの羽毛布団がクローゼットで眠っている。当時一緒に購入したシングルサイズの羽毛布団は30年以上経った今でも暖かいので、できればこのダブルをシングルにリフォームして欲しい。ただかなり古いもので、長年クローゼットに仕舞っていたものだからリフォームできるか心配。」というもの。
百貨店にリフォームを依頼することも考えられたようですが、電話でお話をさせて頂いたところ「やはりプロの方にお任せします」ということで当店にご依頼頂きました。ありがとうございます。
(遠方にお住まいで羽毛布団リフォームをお考えの方はこちらのページをご覧ください)
お預かりしたドイツ製の羽毛布団
［使用期間］ほぼ未使用 (35年間収納していた)
［サイズ］ダブル
［生地］綿100% (平織生地)
［キルト］4×4マス立体
［羽毛］チェコ産ホワイトグース95%
［充填量］1360g
通気性に優れた平織生地
色々と特徴がある布団ですが、最大の特徴はドイツ製の羽毛布団ということで、バティストと呼ばれる平織(ひらおり)の生地が使われている点です。(前回の記事でご紹介したIDC大塚家具さんのダウナも同じくドイツ製の羽毛布団でしたので平織の生地が使われていました)
羽毛布団の掛け心地は主に生地で決まりますから、これまでと同じようなドイツ製の平織生地を使ってリフォームをするのと、日本で一般的なサテン生地を使ってリフォームをするのとでは実際の掛け心地に大きな差が出てまいります。具体的には軽さや蒸れ感が違います。例外もありますが、基本的にはドイツの平織生地は日本のサテン生地に比べ軽くて通気性が高いものが多いのです。(後述しますが、サテンにはサテンの良いところもあります)
こういった違いを無視して、あるいは知らないで、十把一絡げに日本製のサテン生地を使ってリフォームしてしまうと、「思っていた仕上がりと違う」ということにもなりかねません。リフォームの際は、ご自分の布団の生地がどういったものなのかを正しく教えてくれるお店にご相談されることをオススメします。
(サテン生地と平織生地の主な特徴は以下の通り)
サテン生地の基本的な特徴
- 風合いがなめらかでやわらかい (メリット)
- カサカサと音が鳴りにくい (メリット)
- 重い (デメリット)
- おしなべて通気性が低い (デメリット)
平織生地の基本的な特徴
- 風合いが硬い (デメリット)
- カサカサと音が鳴りやすい (デメリット)
- 軽い (メリット)
- 中には通気性が高いものもある(メリット)
どちらも一長一短あるわけですが、これらはあくまで全体としての傾向であって、もちろん例外もあります。実際の生地のクオリティは織りだけでなく、原料の質や糸の太さ、加工技術によっても変わってくるからです。(国によって求める方向性も違います)
例えば日本製の平織生地(80番手)は、軽い(94g/㎡)というメリットはあるものの「風合いが硬くてカサカサと音が鳴りやすい」という平織のデメリットは否めません。また通気性も2.0cc以下なので一般的なサテン生地とそこまで大きな差があるわけではありません。そうなると多少重くなったとしても80番手クラスのサテン生地(114g/㎡)を選ぶ余地も出てきます。軽さを優先するか、柔らかさを優先するかという話ですね。
一方で、ドイツSANDERS社製のプレミアムバティスト(110番手)は、同じく平織でありながらほとんどのサテン生地を圧倒する柔らかさです。100番手クラスのサテン生地に近いレベルなので、平織の欠点をほぼパーフェクトに克服しています。また軽さも75g/㎡と圧倒的に軽量で、通気度も6.6ccと日本のサテン生地の3〜4倍。グレードの低い羽毛と組み合わせると吹き出しのリスクがあるため、使用できる状況は限定されますが、条件と予算さえ許せばサテン生地を選ぶメリットはほとんどありません。(今回T様のお布団に使われていた平織生地も、プレミアムバティストほどではないもののある程度上質なものでした。)
ですので一概にサテンと平織のどちらがいいかというのは難しい問題で、何を優先するか、そして具体的にどのクラスの生地を使うかによって評価が変わって参ります。何が良いか分からないという方はぜひ当店にご相談ください。
羽毛の状態は？
こちらの写真がT様の布団から取り出した羽毛です。品質表示を確認すると、ピルスナー地方で飼育されていたホワイトグースの羽毛が使用されているようです。ダウン率は95%ですから、当時のフラッグシップクラスですね。
充填量は1360gなので日本の羽毛布団に慣れている人からすれば少なく思えるかもしれませんが、中の羽毛にパワーがあり、生地が軽ければこのくらいの充填量で冬用として十分な保温力が得られます。ちなみに当店のフラッグシップモデルの羽毛布団は冬用のダブルで1200gです。(お住まいや体質によってはもっと羽毛を減らしてもいいくらいです)
羽毛はたっぷり詰めれば良いというものではなく、羽毛の品質と生地の軽さのバランス、それになによりご使用になる方の状況を考えた上で充填量を決定するべきだと我々は考えます。
さてこちらはT様の布団から取り出した羽毛(右側)と新品の羽毛(左側)を比べたものです。新品はポーランド産プレミアムマザーグースダウン95%です。どちらも同じ2グラムではありますが、やはり完全な新品と比べると、T様の羽毛のパワーダウンは否めません。とはいえこの程度の劣化であれば、プレミアムダウンウォッシュでしっかりと洗浄・乾燥すればほぼ完全に新品当時に復元するのでご安心を。
(当店の羽毛の見極めにつきましては、下記YouTube動画をご覧ください)
プレミアムダウンウォッシュの結果
取り出し羽毛量：約1360g
プレミアムダウンウォッシュ後の羽毛量：約1160g
リフォーム後
T様のご要望は、ダブルサイズの羽毛布団1枚からシングルサイズの合掛け布団2枚にリフォームしたいというもの。
そこで今回は洗浄・除塵後に残った1160gの羽毛を、460gと700gに分けて布団を仕上げることを提案させて頂きました。(詳細は後述しますが、超軽量のプレミアムバティスト生地を使うことを前提に決定した充填量です)
もうすでに肌掛け布団はお持ちということでしたので、肌掛け布団では物足りなさを感じる時は460gの布団を、そして460gの布団では物足りない時は700gの布団を使って頂くというイメージです。
もし700gで寒さを感じる場合も、460gと700gの布団を重ねて使用できるように留めボタンを付けていますので安心です。
ドイツ製のプレミアムバティストを使用
T様とのご相談の結果、どちらの布団にもドイツ製のプレミアムバティスト生地を使用しました。この生地は極めて良好な掛け心地が得られる最高のものですが、不純物の多い羽毛と組み合わせると小さな塵が吹き出すリスクがあるため、通常リフォームで使うことはありません。ですが今回の羽毛はほぼ未使用品ということもあり、状態は極めて良好。さらに質も良く不純物も少ないので、問題はないと判断いたしました。
またこのプレミアムバティストを使うことで、2枚の布団を重ねて使用した時の重さの問題もほぼ解決します。通常、布団を2枚重ねて使用すると羽毛の総量は大したことがなくても、生地の重みで布団全体が大変な重さになってしまうのですが、プレミアムバティストのように超軽量の生地の場合は2枚重ねてもさほど重くはなりません。
今回のリフォームのキモはこの生地ですね。
リフォーム内容
○1枚目
［サイズ］シングル(150×210cm)
［生地］プレミアムバティスト (綿100% 、平織生地)
［キルト］5×7マス立体
［補充羽毛］なし
［充填量］460g
○2枚目
［サイズ］シングル(150×210cm)
［生地］プレミアムバティスト (綿100% 、平織生地)
［キルト］5×6マス立体
［補充羽毛］なし
［充填量］700g
○リフォーム総額
128,700円(税込)
この仕上がりでしたら、間違いなく快適にお使い頂けることと思います。T様、本当にありがとうございました。
当店ではお客様の羽毛布団を正しく見極めた上で、最適なリフォーム内容をご提案させていただきますので、どうぞお気軽にご相談ください。
羽毛診断、お見積もりは無料です。
