羽毛布団事例[東京都N様]偽物のポーランド産マザーグース。リフォームを取りやめて新しい羽毛布団にお買い替えに。[キングサイズ230×210cm]
宣伝で恐縮ですが、現在羽毛布団の決算セール中です。ぜひこの機会にお買い求め下さい。
目次
リフォームと買い替えどちらが良いのか
「M社のキングサイズの羽毛布団を持っています。羽毛はポーランド産マザーグース95%で、合掛けと肌掛けの2枚合わせタイプです。10年前後の使用ですが、リフォームと買い替えのどちらが良いでしょうか?ビックカメラの生毛工房に相談したら『リフォームをしても新品と同じくらいの価格がかかるから新品がオススメ』と言われたのですが、どうするべきか迷っています。またせっかくなら御社のような専門店に依頼したいと思っています。」
という趣旨のご相談を東京都在住のN様から頂戴しました。ありがとうございます。
当店に相談頂くにあたって、過去ブログもかなり読み込んで下さったようで、大変恐縮です。
診断のため羽毛布団を送って頂くことに
真っ当なポーランドのマザーグースダウン95%の羽毛布団で、10年前後のご使用ならば、買い換えよりもリフォームを推奨するのが基本です。
ですが、使用頻度や使い方によっては10年前後のご使用でも羽毛がボロボロになっていることもありますし、品質表示に「ポーランド産ホワイトマザーグース95%」と書かれていても実際には粗悪な羽毛が使われていることもありますので、やはりこの目で実物を確認してみるまでは「リフォームがいいか買い換えがいいか」の答えは出すことができません。
お客様としては電話のやり取りやLINEのやり取りだけで「リフォームしましょう!」「やめた方がいいです!」とズバッと判断してもらいたいというのが本音だと思いますが、実物を見ずに明確な判断ができるのは本当にレアケースでして(例えばダウン70%など)、何卒ご理解頂けますと幸いです。
かくして、こちらがN様に送って頂いた羽毛布団です。
大量の羽毛が吹き出している状態
送って頂いた羽毛布団を開封して早速拝見したところ、合掛けも肌掛けもかなり羽毛の吹き出しが多いことに驚きました。分かりにくいかもしれませんが、側生地全体に生地から吹き出した羽毛のクズが張り付いている状態でした。
通常、羽毛布団の生地はダウンプルーフ加工という高温高圧のプレスをかけて織り目をつぶし、生地からダウンファイバーが出てこないように仕上げます。
特に日本は欧州諸国と比べて吹き出しに敏感な国なので、かなりキツめにダウンプルーフをかけていることがほとんどで、ここまでのレベルで吹き出しが起こるケースは滅多にありません。(欧州製の羽毛布団や、欧州製の生地を使っている羽毛布団の場合は通気性が非常に高いので吹き出しがあっても不思議ではありません)
にも関わらずここまで吹き出しがあるとなると、
①そもそも不良品で生地にダウンプルーフがかかっていない
②日常的に布団を叩いたり、上に乗ったりして、生地に大きなダメージを与えていた
③水洗いクリーニングを何度も繰り返していた
④中身の羽毛に問題がある(ダウンファイバー・フェザーファイバーが多い)
の4つが可能性として考えられるのですが、①の場合はもっと大量に吹き出しているはずですし、見た目の様子からは②も考えにくい。また③も違うということで、④の可能性が濃厚です。
羽毛を取り出して状態をチェック
そこで抜き出した羽毛がこちらです。
既に布団から羽毛を抜き出している時から触り心地がおかしく、不思議に感じていたのですが、実際に取り出した羽毛を見てみると違和感がすごい。
「ダウンボールに核が全然ないよね?しかも羽肢が妙に直線的だし、微妙に形状も違う。。。これ本当にポーランドのマザーグース?」
通常、ポーランドの上質なグースダウンはダウンボールの中心に白い核があり、その核があることでコシや弾力が生まれているのですが、今回取り出したポーランド産ホワイトマザーグースにはほとんどその核がないのです。
写真左がいわゆるポーランドのマザーグースです。新品ではなく、他のお客様が10年前後使用したものです。
そして右側が今回の羽毛です。
写真では分かりにくいかもしれませんが、左側は白玉のような粒が多数確認できるのに対し、右側は毛があるだけで白い核はほとんど確認できません。
もっと分かりやすいように、少量で比較してみましょう。
左が我々が知るポーランド産マザーグースダウンで、右側が今回のM社のポーランド産マザーグースダウンです。
確実なことは第三者機関で検査をしないと分かりませんが、どちらかという右側はダウンというよりもフェザーに近いもののように見受けられます。拡大して見ると小羽肢の形状が明らかに違います。仮にフェザーだとすると、フェザーはダウンよりも直線的で生地から吹き出しが起こりやすいので、今回日本の羽毛布団にも関わらず生地から大量の羽毛クズ(厳密には羽根クズ)が吹き出していたことも合点がいきます。
取り出した羽毛の全てがこうだったというわけではないのですが、かなりの割合で右側の擬似ダウンが混ざっておりましたので、カサ増しのために意図的に混入させたものかもしれません。
やはりリフォーム前にこの目で状態を確認することの重要性を痛感しますね。
後日、たまたま来日していたポーランドの羽毛原料メーカーの担当者にこの羽毛を見てもらったところ、彼も「これは絶対にポーランドのグース(ホワイトコウダ)じゃないね。」と判断していました。
リフォームではなくお買い換えに
以上の内容をもう少し詳細に羽毛診断のレポートとしてお伝えしましたところ、N様もショックを受けられまして、、、最終的に新品に買い替えられることになりました。診断結果が良かった場合は気兼ねなくお伝えできるんですが、今回のように品質表示と違うものが入っていたり、傷みが進行していてリフォームをオススメできないような時は心苦しいですね。。。
オブラートに包んで誤魔化すのも良くありませんし、かと言ってど真ん中ストレートでお伝えするのも。。。難しいところです。
ご購入頂いた羽毛布団
[サイズ]キングロング230×210cm
[生地]ドイツ製プレミアムバティスト
[キルト]7×6マス立体キルト
[羽毛]ベストオブポーランド・手選別ステッキーマザーグース98%
[充填量]1100g
こちらが今回仕立てさせて頂いた羽毛布団です。
N様はマンションにお住まいですが、これまでは450gと1100gの布団を重ねておやすみになることもあったということで、保温力4の厚みで仕上げています。
羽毛は数量限定のベストオブポーランド・手選別ステッキーマザーグース98%です。
通常羽毛の選別は風の力を使って機械で行います。風で一番遠くまで飛んだ羽毛が良いものと説明されることもあるようですが、それは厳密には正しくありません。風の力で遠くまで飛ぶのは軽くて密度の小さい羽毛です。密度が高い本当のビッグダウンはフェザーと一緒に案外手前に落ちるんですよね。
この羽毛は、機械の力では選別できない高密度のビッグダウンを人間の手で3回選別することで生まれる極上の羽毛です。残念なことに今後入手することができないため、現在庫分が完売次第終了となります。決して安くはありませんが、大手なら2倍の価格をつけるでしょう。
こちらもセール価格ですのでぜひこの機会にご検討下さい。
側生地は、何度も何度も繰り返し登場している、軽さと通気性に優れたドイツ・サンダースカウフマンのプレミアムバティスト。平織の生地ながらしなやかさもあり、世界最軽量クラスの平織よりも丈夫です。しなやかさが最優先の場合は事情が少し変わりますが、軽さと通気性を重視しつつ、その次にしなやかさ、強度の順ならプレミアムバティストがベストでしょう。
N様、この度はありがとうございました。今後のメンテナンス等もぜひ我々にお任せください。
羽毛布団をお送りさせて頂いた後、N様から「感動しています」と大変嬉しいメッセージを頂戴いたしました。このように仰って頂けますと職業冥利に尽きますね。
最近はインスタグラムの投稿が多めです。ブログほど濃い内容ではありませんが、フォローして頂けると喜びます。
また先日羽毛布団リフォームに特化したインスタグラムアカウントを解説しました。そちらもご覧いただけますと幸いです。