羽毛布団リフォーム事例[伊勢市T様]ロマンス小杉のマザーグース羽毛布団をドイツ製の平織生地でリフォーム(シングル→シングル)
快眠屋では三重県内はもちろん、県外のお客様からも羽毛布団リフォームのご相談を多く頂戴しております。遠方にお住まいの方でも安心してリフォームのご依頼を頂けるように写真や動画を交えて1枚1枚丁寧に現状説明をさせて頂いております。布団を直接持ち込めないというお客様もお気軽に電話、LINE、メールでご相談下さい。
※遠方にお住まいで羽毛布団のリフォームをお考えの方はこちらのページをご覧ください。
目次
ロマンス小杉の羽毛布団をリフォームして欲しい
[サイズ]シングル150×210cm
[生地]綿100%(サテン)
[キルト]変形二層式キルト
[羽毛]ポーランドマザーグース95%
[充填量]1100g
T様から「息子用の羽毛布団をリフォームしたい」というご相談を頂戴しました。ありがとうございます。
お預かりした羽毛布団はマザーグースダウンを使用したロマンス小杉の高級品。側生地も100番手クラスのサテン生地が使われており、非常にしなやかな風合いです。以前に百貨店で購入されたものだそうです。
ロマンス小杉自体も羽毛布団のリフォームを受け付けておりますが(当店も窓口なので取次可能です)、往々にしてメーカーのリフォームサービスはあまり融通が効きません。例えば自由にサイズ変更することもできなければ、補充羽毛の種類やその量、キルトパターンを指定することもできません(当然マチ高も)。ということは「羽毛の傷み具合や、洗浄・除塵後の目減り量に応じて補充羽毛の種類と量を微調整する」ということもできず、「暖かすぎたからもう少し厚みを薄めに仕上げる」ということもできません。これは他メーカーも同様です。
「やはり大手の方が安心できる。」とお考えの方はメーカー元にリフォームをご依頼されることをオススメしますが、ブランド云々よりもリフォームの内容を相談しながら細かく決めたいとお考えの方や、質・仕上がりにこだわりたいとお考えの方はぜひ我々にご相談下さい。
リフォーム前の状態
写真からも分かるように身体が当たる中央部分はヘタリがあり、特に最も傷みやすい襟元付近は両サイドと比べるとボリュームダウンが顕著です。基本的には男性の方が寝具の劣化が早いのでおそらくその影響もあるはず。
できれば掛布団カバーは週に1度洗濯し、羽毛布団は2週間に1回を目安に布団乾燥機にかけましょう。(天日干しも可)
水洗いは毎年だと多すぎるので、多くても3年に1度、通常は5年に1度のペースがオススメです。洗えば洗うほどダウンプルーフ加工が弱まって羽毛のクズが吹き出しやすくなるので、水洗いの回数は最小限に抑えましょう。日本は平織りよりもサテンが多いので尚更です。
そんなに長い間洗わなくても大丈夫?と思われるかもしれませんが、洗わなくても大丈夫なように掛布団カバーをこまめに洗濯するのだとお考えください。羽毛布団の寿命はお手入れ次第でビックリするくらい変わってきます。(カバーが全く洗えていない場合は当然水洗い回数は増えます)
二層式キルトは蒸れやすい
写真では分かりにくいと思いますが、今回のロマンス小杉の羽毛布団は二層式キルトが採用されていました。見た目は1枚の羽毛布団ですが、内部にもう1枚生地があり、2階建てのようになっています。
二層式キルトは一般的な立体キルトと比べて保温性が高いというメリットがある一方で、湿気が抜けにくいので蒸れやすいという欠点があります。またその高い保温性ゆえに、代謝が高い男性やお子さんが使用すると過剰な暖かさで汗をかき、眠りの質が悪化したり、布団の劣化が早くなりというデメリットもあります。
今回ご使用になっていたのは30代の男性なので、それもあって使用年数の割には布団が傷んでいたのだと思われます。
※寒がり体質の方だとしても築20年以内のマンションで中住戸に住んでいる方や、断熱等級5以上の戸建て住宅にお住まいの方もかえって不快な可能性が高いです。
羽毛の状態を確認
こちらが取り出した羽毛です。
汗や皮脂で羽毛が汚れ、こより状に捻れたり、ダマのように固まっています。
がしかし、元々の羽毛の質が良かったということもあり、ダウンボール自体は壊れていません。またフェザーも少ないので、団子状に圧縮されて押し固められた羽毛の塊もありません。
この状態でしたらきちんと羽毛を洗えば良い状態に戻るはずです。
リフォーム後
- [サイズ]150×210cm
- [キルト]5×6マス立体キルト
- [生地]ドイツ製プレミアムバティスト(平織)
- [補充羽毛]ポーランド・プレミアムマザーグース95%
- [総充填量]1100g(このうち100gが補充羽毛)
二層式キルトではなく立体キルト
リフォーム前の羽毛布団は二層式キルトが採用されていましたが、上述のようにこのタイプのキルトは高い保温性が得られる反面、「蒸れやすい」「汗をかきやすい」というデメリットがありますので、万人向けのキルトではありません。
そこで今回はバランスの良い立体キルトで仕上げさせて頂きました。羽毛のパワー、充填量、生地の軽さ、求める暖かさを総合的に考慮した結果、マス目は5×6マスの30マスキルト、マチ高7.0cmで仕上げています。(最適なキルトパターンはどういった布団を目指すかによって変わってまいりますので、一概にこれがいいという正解はありません)
通気性に優れた海外製の平織り生地
羽毛布団の掛け心地を最も左右する側生地は、T様とご相談の結果、ドイツsanders/KAUFMANNの平織生地(プレミアムバティスト)を使用しました。
※しばしば誤解されがちですが、平織やサテン織は素材の名称ではなく織り方(織組織)の名称です。コットンの平織もあればポリエステルの平織もあります。
羽毛の場合はお金さえ出せばパーフェクトなものが手に入りますが、生地に関してはそうはいきません。織物の特性上、何かを優先すると必ず他の何かが犠牲になりますので、全てのパラメーターが100点ということはあり得ないからです。
今回は「蒸れにくさ(通気性の高さ)と軽さを優先しつつ、しなやかさと強度もある程度考慮したい」というご要望もあり、プレミアムバティストを採用して頂きました。
補充羽毛はポーランド・プレミアムマザーグース95%を100g
今回は布団を解体して取り出せた羽毛の量(1140g)と、洗浄・除塵後に残った量(1000g)、羽毛の傷み具合、ほどほどの暖かさに仕上げたいというご希望を受け、補充羽毛は100gとし、1100gで仕上げることにいたしました。(こちらで勝手に補充量を決めることはなく、お客様とご相談の上で決定させて頂きます)
お客様にとっては事前に補充羽毛量が決まっている方が価格が分かりやすくて良いという点もあると思うのですが、目指す仕上がりによっては補充羽毛が0gで良いこともありますし、400gや500g必要なこともありますので、大変恐縮ですが、事前に一律で決められるようなものではないということをご理解頂けますと幸いです。
暖かさ至上主義はもうやめよう
今回のリフォームでは、あえて保温性を控え目にし、暖かさよりも蒸れにくさと軽さを優先して布団を仕上げました。
寝具業界には「羽毛布団は暖かければ暖かいほどいい」という考えが今でも根強く残っていて、「やっぱり高い羽毛布団は暖かさが違いますよ」というセールストークが売り場では繰り広げられているようですが、快適な眠りには体質と住環境に適した暖かさが必要なのであって、過度な暖かさは必要ありません。むしろ害悪です。
戸建て住宅でも、無断熱かつ低気密の日本家屋とHEAT20 G3クラスの高性能住宅とでは真冬の室温に15℃以上の差が生まれますし、同じマンションに住んでいても最上階の角部屋と中層階の中住戸では話が変わってきます。ここに体質の違いもあるわけですから、猫も杓子も羽毛をたっぷり詰め込んだ2層式キルトが良いという話ではないのです。
ちなみに我々が質の良い羽毛を使うのは暖かさのためというよりも、「ファイバー(羽毛のクズ)が少ないから通気性の高い生地と組み合わせても吹き出しリスクが低い」「質の低い羽毛と比べて少ない量でも同じような暖かさが手に入る(軽量化が望める)」「アレルギーのリスクが低い」「年数が経過してもヘタリにくいので長く使用できる」という理由が主です。
質の低い羽毛でもたっぷりと詰め込めばちゃんと暖かい布団に仕上がります。ただしファイバーが多いので通気性の低い生地を使っても吹き出してくることがちょくちょくあります。またアレルゲンの混入リスクも高まりますし、ヘタリも早いという欠点は受け入れなければいけない。
適度な暖かさを目指すことを快眠屋ではオススメいたします。
編集後記
とある展示会で「アメリカの会社からライセンスを受けて作っている枕なんです。どうですかこの素材、気持ち良くないですか!?」と言われたので、色々と詳しく話を聞いてみると支離滅裂な回答ばかりで驚いた。話をした人はハウスメーカーでセミナーをするようなジャーナリストの方だそうだが、最終的には「うちの枕はオーダーメイド枕と同じなんです!」と言われ完全にノックアウト。(根拠があれば納得しますが、自分で高さを調整できるからオーダーメイドなんです!的なレベルなので…)
オーダーメイド枕は作り手によってクオリティが変わるし、使用できる素材が限定されてくるから感触のバリエーションが少ないし、そもそも来店頂ける人にしか提供できないという欠点があるから、オーダーメイド枕に代わる画期的な製品があれば是非とも導入したいと思っているのだけれど、どこのメーカーも「新素材だから合うんです!」だとか「斬新な形なんです!」とかいう一行トークに終始していて、導入には未だ至らず……。
本当にそんな簡単に解決できる話だったら良いんですけどねぇ。